何代目で配られたか
来歴文書には、その文書を書いた時点で何代目だったかが書かれています。 「昭和30年度は雑種第10代」というように。
集めて並べると、ひとつのことが見えます。 品種は、固定が終わる前に配られていた。
国の試験場は、F1からF4で配っていた
交配した国の試験場は、雑種の初期世代だけ面倒を見て、あとは県に渡します。 渡すときの世代が文書に書かれています。
| 文書 | 配った世代 | 配った年 |
|---|---|---|
| ワカサ・ヤマホナミ(越南15・18号) | F1 | 昭和22年 |
| 水稲農林6号(近畿9号) | F3 | 昭和3年 |
| 水稲農林50号(東北50号) | F3 | 昭和13年 |
| 水稲藤坂4号(ふ系19号) | F3 | 昭和17年 |
| 水稲遠野2号(遠系3号) | F3 | 昭和10年 |
| 水稲愛子2号(あ系3号) | F3 → F4 | 昭和9年 → 昭和10年 |
| オバコワセ(東北42号) | F4 | 昭和12年 |
| ナツミノリ(東北58号) | F3 | 昭和19年 |
| チョウカイ(東北56号) | F3 | 昭和20年 |
F1で配った例まであります。 ワカサとヤマホナミは、交配の翌年にF1の種子が出雲へ送られ、 その次の年に福井が「雑種第2代個体選抜試験」に供試しました。
水稲愛子2号はさらに細かく、 F3で宮城県立農事試験場に渡り、翌年に愛子試験地の創設と同時にF4が移管されています。
つまり、交配する場所と選ぶ場所が分かれているだけでなく、 固定する作業そのものが県に渡されていた。
系統名がついても、まだ固定の途中
系統名は、固定が終わった証ではありません。
| 文書 | 系統名をつけた年と世代 | 文書を書いた年度の世代 |
|---|---|---|
| コシヒカリ(越南17号) | 昭和28年・F8 | — |
| ヤマセシラズ(東北63号) | 昭和29年2月 | 昭和33年度・F12 |
| チョウカイ(東北56号) | 昭和25年 | 昭和28年度・F11 |
| チヨヒカリ(東海6号) | 昭和29年2月 | 昭和31年度・第11代 |
| アズサ(北陸56号) | 昭和27年 | 昭和30年度・F10 |
| ヤマホナミ(越南18号) | 昭和28年 | 昭和34年度・F13 |
| ワカサ(越南15号) | 昭和27年 | 昭和36年度・F15 |
| ワカクサ(越南39号) | 昭和35年 | 昭和39年度・F11 |
| ムツコガネ(ふ系62号) | 1961年度 | 1963年度・F12 |
| ハルカゼ(関東74号) | 昭和39年度 | 昭和42年度・F13 |
| ミネアサヒ(中部17号) | 昭和48年 | 昭和55年度・F14 |
系統名をつけて県に配り、そのあとも世代を進めている。 文書は「地方的適否を確かめてきたもので、昭和N年度は雑種第M代である」という形で終わります。 配りながら、まだ固定を続けていた。
配ってから、分離が見つかった
その証拠がひとつ残っています。ミネアサヒの文書です。
なお、配布初年度に出徳期の分離がみられたので再固定をはかり、昭和50年以降、固定系統として供試した。
(「出徳期」は「出穂期」の読み取りが崩れたものです。資料にある傷に挙げています。)
配った初年度に、出穂期がそろっていないことが分かった。 それで固定をやり直し、2年後から固定系統として出し直しています。
昭和48年に系統名をつけて配り、昭和50年に固定し直し、昭和55年度でF14。 「固定の途中で配られていた」ということが、これ以上はっきりする記述はありません。
同じ交配でも、固定世代が違う
コシヒカリと同じ交配から出た11系統のうち、 東北に渡った2本の固定世代は大きく違います。
| 年 | 世代 | |
|---|---|---|
| ハツニシキ(奥羽224号) | 1953年 | F8 |
| ヤマセニシキ(奥羽225号) | 1961年 | F16 |
同じ1回の交配から出て、同じ東北で選ばれて、8代の差。 選ぶ人が「もう決まった」と判断する時期が違ったということです。
世代を早回しする
12年、15年とかかる作業を短くする手も、文書に残っています。
暖かい土地で年に2世代——ニキサカエ(西海75号)
育種年限短縮の目的で、同年冬から翌春にかけて同場指宿試験地でF1を養成し
鹿児島の指宿です。九州の試験場が、自分の暖かい試験地で冬を使っています。
県をまたいで送る——ムツコガネ(ふ系62号)
1956年春F3種子を鹿児島県農業試験場水稲育種部に送付して、同地において2年間にわたり苗代直播集団栽培で世代短縮を行ない、F3よりF6まで世代を進めた。1958年F6穂を藤坂試験地にうつし
青森→鹿児島→青森。2年でF3からF6まで。 寒い土地で使う品種を、暖かい土地で早回しして持ち帰っています。
温室を使う——同じムツコガネの文書
同年冬期間に温室にて雑種第1代の世代短縮を行ない
交配した年の冬に、もうF1を進めている。
早回しをしなかった例も並べておきます。 水稲農林19号は昭和4年の交配で、品種名がついたのは昭和16年4月。12年。
読むときに気をつけること
- 「雑種第M代」はその文書を書いた年度の世代で、育成が終わった世代ではありません
- 系統名がついていることは、固定が終わったことを意味しません
- このサイトは世代をデータとして持っていません。文書が書いている世代を、本文に引くだけにしています。 同じ品種でも文書の年度が違えば世代が違うので、1つの数字にすると嘘になります
出典
- イネ品種データベース検索システム「越南17号(コシヒカリ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-09-10
- イネ品種データベース検索システム「近畿9号(水稲農林6号)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-09-16
- イネ品種データベース検索システム「東北50号(水稲農林50号)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「ふ系19号(水稲藤坂4号)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「遠系3号(水稲遠野2号)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「あ系3号(水稲愛子2号)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東北42号(オバコワセ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東北58号(ナツミノリ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東北56号(チョウカイ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東海6号(チヨヒカリ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「北陸56号(アズサ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南18号(ヤマホナミ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南15号(ワカサ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南39号(ワカクサ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「ふ系62号(ムツコガネ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「関東74号(ハルカゼ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「中部17号(ミネアサヒ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「奥羽224号(ハツニシキ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「奥羽225号(ヤマセニシキ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム 来歴文書「イナバワセ」 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-09-25