資料が食い違っているところ
同じ親子関係について、資料が別のことを言っていることがあります。このサイトはそれを「諸説あり」として記録し、片方に決めて線を引くことをしません。記録しているものを全件ここに並べます。
どちらを本文に採ったかと、その理由を各件の最後に書いています。採らなかったほうを「誤り」とは書きません。資料そのものが傷んでいる場合(番号の書き間違い・電子化で落ちた字)は別に扱っていて、資料にある傷のページにまとめてあります。
ここに並ぶのは6件です。番号が D001 から D008 まで飛んでいるのは、調べる途中で立てた問いのうち解けたもの(D004・D005)を外しているためで、番号を詰めずに空けてあるのは、あとから同じ問いを立て直さないためです。食い違いの中身は、交配した年・系統名の書き方・品種が同じものかどうかの3種類に分かれます。どれも、どちらかの資料が間違っていると決められるだけの材料がありません。
コシヒカリの母本と父本 D001
- 母本=農林22号、父本=農林1号 出典: イネ品種データベース検索システム「越南17号(コシヒカリ)」品種来歴文書 / イネ品種データベース検索システム 交配系譜図「越南17号」 / 戦後日本のイノベーション100選「コシヒカリ」経緯
- 母本=農林1号、父本=農林22号 出典: コシヒカリのエピソード1 〜交配から系統の育成まで〜
農研機構の来歴文書は「「農林22号」を母とし「農林1号」を父として」と語で明記している。育成県である新潟県はこれと逆に記す。系統図は来歴文書の表記で描き、新潟県の記述をここに併記する。どちらかを誤りとは書かない。
交配した年 D002
- 昭和19年(1944年) 出典: コシヒカリのエピソード1 〜交配から系統の育成まで〜 / 新潟コシヒカリの軌跡 〜誕生から定着に至るまで〜 / 戦後日本のイノベーション100選「コシヒカリ」経緯
- 昭和20年(1945年) 出典: イネ品種データベース検索システム「越南17号(コシヒカリ)」品種来歴文書 / イネ品種データベース検索システム「越南14号(ホウネンワセ)」品種来歴文書 / イネ品種データベース検索システム「奥羽224号(ハツニシキ)」品種来歴文書 / イネ品種データベース検索システム「奥羽225号(ヤマセニシキ)」品種来歴文書
農研機構の来歴文書は当時の奨励品種採用申請書に基づくとみられ、昭和20年と記す。同じ交配から出たホウネンワセ・ハツニシキ・ヤマセニシキの来歴文書も、4本そろって昭和20年と書く。新潟県の記録は昭和19年に交配し昭和20年は労力不足で栽培を見送ったとする。本文では1944年を採り、この食い違いを注記する。
農林1号の母本の表記 D003
- 森多早生 出典: イネ品種データベース検索システム 交配系譜図「北陸4号」
- 森田早稲 出典: イネ品種データベース検索システム「北陸4号(水稲農林1号)」品種来歴文書
同じ農研機構データベースの中で、系譜図の欄と来歴文書で表記が異なる。系譜図の表記を主とし、別表記を併記する。
亀の尾4号の表記 D006
- 亀の尾4号 出典: イネ品種データベース検索システム 交配系譜図「陸羽132号」
- 亀ノ尾4号(一般的な表記)
農研機構データベースの表記を採る。一般に流通している表記は「亀ノ尾」だが、出典が持てるほうを主とする。
ひとめぼれの母本と父本 D007
- 母本=コシヒカリ、父本=初星 出典: イネ品種データベース検索システム 交配系譜図「東北143号(ひとめぼれ)」
- 母本=初星、父本=コシヒカリ 出典: 水稲新品種「ひとめぼれ」について(宮城県古川農業試験場研究報告)
農研機構の交配組合せ欄は「コシヒカリ/初星」で、スラッシュ前が母本という慣例に従えば母はコシヒカリ。一方、育成した古川農業試験場の報告は「コシヒカリ(父)×初星(母)」と書いている。コシヒカリ自身の母本父本でも同じ食い違いが起きており(D001)、この種のずれは珍しくない。系統図は農研機構表記で描き、ここに両方を残す。
ともほなみ(中部125号)にコシヒカリが交配されているか(2026-10-08に解けた) D008
- 交配組合せは「コシヒカリ//稲系IL946/コシヒカリ」 出典: イネ品種データベース検索システム「越南17号を親とする品種一覧」(全607行)
- 来歴は1997年の人工交配を「ミネアサヒ」母・陸稲「戦捷」父と書き、そのうえで「2001~2002年にかけて「稲系IL946」に「コシヒカリ」を2回交配し」と書いている 出典: イネ品種データベース検索システム 来歴文書「中部125号」
食い違いではなかった。2026-10-08に来歴文書を全文読み直したところ、コシヒカリの交配は後半の段落に書かれていた。ここに「コシヒカリには触れていない」と書いていたのは、最初の一文だけを読んだこちら側の誤りである。どちらの資料も誤っていない。個別ページを作らない理由は無くなったが、「稲系IL946」と陸稲「戦捷」を系統図に加えてから作る。