1回の交配から何本も出る
交配は1回でも、そこから出る系統はひとつではありません。 雑種の集団を別の場所に分けて配り、別々に選ぶと、別の品種になります。
来歴文書を突き合わせて、同じ1回の交配から出たと確かめられたのは4組です。
| 交配 | 年 | 場所 | 出たもの |
|---|---|---|---|
| 農林22号 × 農林1号 | 1944 | — | 11系統(同じ交配から出たもの) |
| 近畿35号 × 近畿34号 | 昭和16年 | 鴻巣試験地 | コガネナミ(越南5号)・ヤエホ(山陰47号) |
| 農林22号 × 農林14号 | 昭和21年 | 鴻巣試験地 | ワカサ(越南15号)・ヤマホナミ(越南18号) |
| 中京旭 × 農林22号 | 昭和20年 | 東海支場 | チヨヒカリ(東海6号)・ヤマビコ(東海7号) |
どれも、2本以上の来歴文書が年・場所・母・父まで一致したものだけです。
分かれ方が3通りある
県が分かれる
コガネナミとヤエホは、同じ交配の種が2つの県に渡りました。
| 渡った先 | 採用県 | |
|---|---|---|
| 越南5号 コガネナミ | 新潟 → 福井 | 福井 |
| 山陰47号 ヤエホ | 島根 → 出雲 → 島根 | 島根 |
選ぶ場所が違えば、文書が書く適地も違います。 コガネナミは「関東東山の平坦部及び福井以南の中山間部」、ヤエホは「中山間部一円及び山間部の晩生種」。
コシヒカリと同じ交配から出た11系統も同じ形です。 福井(越南14・17号)と東北(奥羽224・225号)に分かれて配られ、固定世代まで違いました。
同じ県で、熟期が分かれる
ワカサとヤマホナミは違います。 配られた先まで同じでした——鴻巣で交配し、出雲へ渡し、翌年に福井が譲り受けた。
それでも出てきたものは分かれています。
| 熟期 | |
|---|---|
| 越南15号 ワカサ | 早生 |
| 越南18号 ヤマホナミ | 中生の晩 |
同じ種を同じ場所で選んで、熟期が分かれた。 選ぶ人が1つの集団から別のものを取り出している、ということです。
系統番号が連番になる
チヨヒカリとヤマビコは東海6号と東海7号。 同じ交配から出たものが、続いた番号で系統名をもらっています。
2本の文書は年(昭和20年)・場所(東海支場)・母(中京旭)・父(農林22号)が一致し、 その後の移動(安城農事改良実験所)まで同じです。 このサイトでは2つの関係に同じ交配の記号(crossId)を与えています。
交配組合せが同じでも、同じ交配とは限らない
ここを混ぜると間違えます。
コシヒカリの両親の子一覧から名前のついた行を写すと、 同じ交配組合せを持つまとまりが14組あり、延べ40品種がそこに入ります。
| 件数 | 交配組合せ | 品種 |
|---|---|---|
| 7 | 秀峰/農林22号 | うこん錦・ほまれ錦・万代錦・早生若葉・若葉・若葉4号・黄金錦 |
| 5 | 農林22号/農林1号 | コシヒカリ・ハツニシキ・ホウネンワセ・ヤマセニシキ・越路早生 |
| 4 | 奥羽189号/農林1号 | 岩木・玉陸奥・紅錦・豊栄 |
| 3 | 農林22号/トワダ | 601-1・でわみのり・ムツコガネ |
| 3 | 晩33号/農林1号 | 新3号・新4号・水稲農林50号 |
| 2 | 近畿35号/近畿34号 | コガネナミ・ヤエホ |
| 2 | 農林22号/農林14号 | ワカサ・ヤマホナミ |
| 2 | 中京旭/農林22号 | チヨヒカリ・ヤマビコ |
| 2 | 奥羽187号/農林1号 | オバコワセ・猪苗代1号 |
| 2 | 坊主2号/農林1号 | 早汐・早潮 |
| 2 | 農林1号/農林15号 | 1718・暁 |
| 2 | 双葉/近畿34号 | 双近4号・綾錦 |
| 2 | 農林22号/新4号 | 越かおり・越栄 |
| 2 | 農林22号/藤坂5号 | しなのひかり・奈系212 |
このうち、同じ1回の交配と確かめられたのは上の4組だけです。 残りは「同じ親の組み合わせで交配した」ことしか分かりません。
確かめられない以上、同じにはしない。その理由がはっきり出ている例があります。
ハルカゼ(関東74号)は母が農林23号、父が農林22号。 これはコガネナミ・ヤエホと同じ母父です。 けれど文書が書いている交配年と場所が違います。
| 交配年 | 場所 | |
|---|---|---|
| コガネナミ・ヤエホ | 昭和16年 | 鴻巣試験地 |
| ハルカゼ | 昭和29年 | 関東東山農業試験場 |
13年後の、別の場所での別の交配。 交配組合せが同じだからといって同じ交配にしていたら、これを1回の交配として数えてしまいます。
このサイトが決めていること
- 同じ交配の記号(crossId)を与えるのは、2本以上の文書が年・場所・母・父まで一致したときだけ。 交配組合せの文字が同じであることは根拠にしない
- 交配年は1回の交配に1つ。きょうだいの文書が別の年を書いていたら、 資料側の不一致として諸説に記録し、データは1つにそろえる
- 同じ交配から出たきょうだいの文書が母父を語で書いていれば、その断定は使ってよい。 慣例からの推測ではないので。ただしその根拠をページ本文に書く(越路早生がその例)
全件は片親が同じもの ― 名前のついた全件に写してあります。
出典
- イネ品種データベース検索システム「越南17号(コシヒカリ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-09-10
- イネ品種データベース検索システム「奥羽224号(ハツニシキ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「奥羽225号(ヤマセニシキ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「近畿34号を親とする品種一覧」(全167行) 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南5号(コガネナミ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「山陰47号(ヤエホ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南15号(ワカサ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「越南18号(ヤマホナミ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東海6号(チヨヒカリ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「東海7号(ヤマビコ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- イネ品種データベース検索システム「関東74号(ハルカゼ)」品種来歴文書 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01