コシヒカリBL
農研機構のデータベースで「コシヒカリを親にした品種」をたどると、 名前のついたものが207件出てきます。そのうち26件が「コシヒカリBL」「コシヒカリSBL」と 名のつく系統です。
これらは、このサイトでは1品種ずつのページを作っていません。理由を書きます。
遺伝子を1つだけ入れ替えたコシヒカリ
コシヒカリの弱点はいもち病です。品種を変えずにこれを直すために取られたのが、 いもち病抵抗性の遺伝子だけを他品種から持ち込み、あとは何度もコシヒカリに戻し交配する という方法でした。
交配組合せを見ると、やり方がそのまま読めます。
コシヒカリ/ササニシキ//5*コシヒカリ(コシヒカリ新潟BL1号) コシヒカリ/新潟早生//6*コシヒカリ(コシヒカリ新潟BL4号) コシヒカリ*3///コシヒカリ/IRBL9-W//2*コシヒカリ(コシヒカリ関東BL1号)
5*コシヒカリ はコシヒカリを5回戻し交配したという意味です。
一度どこかの品種と交配し、その子にコシヒカリを掛け、その子にまたコシヒカリを掛ける。
これを繰り返すと、持ち込んだ遺伝子の周りを除いて、中身はほとんどコシヒカリに戻ります。
「別の品種」として並べると、かえって誤解を生む
このサイトは系統図で品種の違いをたどるサイトです。 BL系統を1つずつ並べると、図の上ではコシヒカリの子が26人増えたように見えます。
けれど実態は逆で、BLは「コシヒカリと同じものであること」を目指して作られています。 草丈も、熟期も、食味も、コシヒカリと区別がつかないように育成されている。 違うのはいもち病抵抗性の遺伝子だけです。
福井県農業試験場の育成報告に、狙いがそのまま書かれています。
「コシヒカリ」へのいもち病真性抵抗性遺伝子Pitaの導入を目的として育成 1995年の初回の交配では「コシヒカリ」を母親とし、父親にいもち病真性抵抗性遺伝子Pitaを持つ「東北IL6号」(後の「ササニシキBL6号」)を用いた
目的が「遺伝子1つの導入」と書いてある。新しい品種を作るとは書いていません。
新潟県は2005年に、県内のコシヒカリを一斉に入れ替えた
新潟県は導入の理由をこう説明しています。
コシヒカリの弱点(いもち病に弱い)をカバーできれば農薬使用量の減少にもつながることから
そして時期はこうです。
平成17年産米から従来のコシヒカリよりも農薬を減らした栽培ができる「コシヒカリBL」を県内に一斉導入 平成17年に一斉導入を行いました
2005年産から、新潟県のコシヒカリは一斉にBLへ切り替わりました。 店頭で「新潟県産コシヒカリ」として売られているものの多くは、 この一斉導入以降に作られたBLです。
味や見た目で区別がつかないように育成された品種が、 県単位で、産地の主力をまるごと置き換えた。 系統図の上では26行に見えるものの、実際の姿はこれです。
1つずつ並べるより、「そういう仕組みのものが26件ある」と1か所に書いたほうが正確だと 判断しました。以下が全件です。
収録している26件
| 系統名 | 品種名 | 交配組合せ |
|---|---|---|
| IL-a | コシヒカリ新潟BL1号 | コシヒカリ/ササニシキ//5*コシヒカリ |
| IL-i | コシヒカリ新潟BL2号 | コシヒカリ/トドロキワセ//5*コシヒカリ |
| IL-ta2 | コシヒカリ新潟BL3号 | コシヒカリ/PiNo.4//5*コシヒカリ |
| IL-z | コシヒカリ新潟BL4号 | コシヒカリ/新潟早生//6*コシヒカリ |
| IL-k | コシヒカリ新潟BL5号 | コシヒカリ/越みのり//5*コシヒカリ |
| IL-km | コシヒカリ新潟BL6号 | コシヒカリ/ツユアケ//5*コシヒカリ |
| IL-zt | コシヒカリ新潟BL7号 | コシヒカリ/とりで1号//5*コシヒカリ |
| IL-b | コシヒカリ新潟BL8号 | コシヒカリ/BL1//5*コシヒカリ |
| IL-t | コシヒカリ新潟BL13号 | コシヒカリ/K59//7*コシヒカリ |
| 富山BL1号 | コシヒカリ富山BL1号 | コシヒカリ*2/BC-zt |
| 富山BL2号 | コシヒカリ富山BL2号 | コシヒカリ*2/BC-ta2 |
| 富山BL3号 | コシヒカリ富山BL3号 | コシヒカリ*3/BC-b |
| 富山BL4号 | コシヒカリ富山BL4号 | コシヒカリ*4/BC89 |
| 富山BL5号 | コシヒカリ富山BL5号 | コシヒカリ*5/BC49 |
| 富山BL6号 | コシヒカリ富山BL6号 | コシヒカリ*5/BC57 |
| 富山BL7号 | コシヒカリ富山BL7号 | コシヒカリ/96KBIL-32//2*コシヒカリ |
| 富山80号 | コシヒカリ富山APQ1号 | ハバタキ/コシヒカリ//5*コシヒカリ |
| 越南IL6号 | コシヒカリBL1号 | コシヒカリ/東北IL6号//4*コシヒカリ |
| 愛知106号 | コシヒカリ愛知SBL | コシヒカリ///cmsコシヒカリ*3//(cmsコシヒカリ*2/3ⅢK-84)F6 |
| 中国IL3号 | コシヒカリ近中四SBL1号 | コシヒカリ/中系IL10 |
| 関東IL1号 | コシヒカリ関東HD1号 | コシヒカリ/96KBIL-64//コシヒカリ |
| 関東IL3号 | 関東HD2号 | コシヒカリ/96KBIL-140//コシヒカリ///コシヒカリ |
| 関東IL9号 | コシヒカリ関東BL1号 | コシヒカリ*3///コシヒカリ/IRBL9-W//2*コシヒカリ |
| 鳥系IL1号 | ゆめそらら | コシヒカリ/アキヒカリ//6*コシヒカリ |
| — | コシヒカリつくばSD1号 | コシヒカリ*5/IR24 |
| — | コシヒカリかずさ1号 | コシヒカリ/ハバタキ//3*コシヒカリ |
まだ確かめられていないこと
確かめられたのは、新潟県が2005年産から一斉導入したことと、 コシヒカリBL1号の育成目的がPita遺伝子の導入であることまでです。
まだ当たっていないのは、富山県・愛知県・関東・鳥取がそれぞれいつ導入したか、 新潟県産コシヒカリのうちBLが実際に何割を占めるか(県の資料に数字がありません)、 そして各BLがどのいもち病レース群に対応しているかです。
上の26件が存在し、その交配組合せがこうであることは農研機構データベースによります。 それ以上のことは、確かめられた分だけ書き足していきます。
出典
- イネ品種データベース検索システム「越南17号を親とする品種一覧」(全607行) 農研機構 次世代作物開発研究センター ・ 確認日 2026-10-01
- コシヒカリBL 新潟県 ・ 確認日 2026-09-18
- 水稲新品種「コシヒカリBL1号」(福井県農業試験場研究報告 42) 福井県農業試験場 ・ 確認日 2026-09-18
- コシヒカリBLの導入のねらい 新潟県 農林水産部 農産園芸課 ・ 確認日 2026-09-10